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「エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム」開催レポート

「エシカル消費(倫理的消費)」のムーブメントが日本でも盛り上がりつつあるなかで、その枠組みのなかに「動物への配慮」をきちんと位置付けようと、2016年10月2日、立教大学ESD研究所、NPO法人アニマルライツセンター、NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)、そしてPEACE~ 命の搾取ではなく尊厳を の4団体が、立教大学池袋キャンパスでシンポジウムを開催しました。
各地で様々なイベントが目白押しの時期でしたが、約250名もの方がご来場くださり、エシカル消費、アニマルウェルフェア、アニマルライツについて理解を深めていただきました。

第一部 エシカルとは?

「エシカル消費と動物への配慮」山本良一

日本のエシカル消費運動をけん引してこられた東京大学名誉教授の山本良一氏。地球並びに複雑な生命は稀であるというレア・アース仮設に基づき、「人類文明と地球生命圏の両方を永続させていかなければならない」とし、「人類は狭い人間中心主義を乗り越えて、動物にも深く配慮していくことが必要だ」と力説。ご自身が座長を務める消費者庁の「倫理的消費」調査研究会の動向についてもご説明くださいました。
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基調講演
「エシカル消費における動物への配慮の重要性」ロブ・ハリスン

基調講演は、世界のエシカル消費運動の中心的存在である英国の雑誌「エシカル・コンシューマー」の創刊メンバーであり主筆を務めるロブ・ハリスン氏にご登場いただきました。ヨーロッパのエシカル消費運動は、
①ボイコット
②調査
③エシカルな企業との連携
④認証ラベル
⑤ランキング
という5つのステップを経て発展してきたとの説明があり、ケーススタディとして英国における鶏卵生産の変遷が挙げられました。1990年バタリーケージ生産が90%であったものが2016年には放牧生産50%以上に移行しており、その間には生産方法の表示義務付けなどの過程がありました。ベジタリアン・ヴィーガン人口も増加しており、抗生剤の利用による人体への被害なども含め、工場畜産の問題点について、わかりやすいご講演をいただきました。
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質疑応答では、参加者の関心の高さをうかがわせる鋭い質問が飛び交い、「日本は水生生物の利用がより深刻ではないか」との質問には、MSCラベル(Marine Stewardship Council; 海洋管理協議会の取り組みが紹介され、「ラベル認証では信頼性をどのように担保するのか」という質問には、NGOや消費者が監視していくことが必要との回答がありました。

「日本における動物利用の現状と課題」アニマルライツセンター、JAVA、PEACE

主催の3団体からは、化粧品の動物実験、ファッション(毛皮、ウルトラファインウール、アンゴラ、ダウン)、工場畜産(乳牛、母豚、肉用豚、ブロイラー、採卵鶏)について、動画を用いた説明を行いました。冒頭の「残酷な映像があるので退出も可能」とのアナウンスにもかかわらず、ほぼ全員が最後まで退出することなく動物たちの置かれている現実を直視してくださいました

第二部 現状と取り組み

「消費行動と動物とのかかわり」細川幸一

消費者政策、消費者教育を専門とする日本女子大学教授、細川幸一氏からは、消費者の目線に立った動物への配慮の必要性について、具体的な事例を交えながらご説明いただきました。現代社会の豊かさはどこから来ているか、現代の消費社会の問題は何なのか、なぜ現在の社会が動物問題に無関心なのか、今後消費者に何ができるのか、専門に基づいた分析でありながら非常にわかりやすいお話があり、問題を身近に感じさせる30分でした。
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「畜産動物の福祉の現状―考え方、評価法、指針―」佐藤衆介

動物行動学をベースにした産業動物のアニマルウェルフェアについて、日本の第一人者である帝京科学大学教授、佐藤衆介氏からご講演をいただきました。動物福祉(アニマルウェルフェア)という概念の登場から現在に至るまでの流れを紹介、「5つの自由」という考え方がさらにポジティブな方向に見直されている経緯をご説明いただくとともに、鶏はケージと屋外のどちらが好きか、豚は運動と仲間とどちらが好きかといった研究結果の紹介や、EU、OIE(世界動物保健機関)、ISO(国際標準化機構)などで動物福祉の取り組みが進むなか日本政府も対応が迫られているという現状をご報告いただきました。
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「ファッションと食―持続可能性と動物」岡田千尋

主催団体の一つであるアニマルライツセンター代表の岡田千尋からは、持続可能性という観点から、毛皮や皮革などのファッション、そして畜産が環境に及ぼしている影響について報告しました。毛皮産業の街、中国河北省・辛集市では公害が発生し多くの村人に健康被害が出ているという現地調査レポートや、森林破壊、地球温暖化、水や食料など資源の過剰利用など、持続可能性に多大な悪影響を及ぼしているという畜産の問題など、動物に対する感傷的な視点を排除しての問題提起をいただきました。
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「日本企業は動物保護をどう捉えているか」山口智彦

株式会社クレアンのCSRコンサルタントである山口智彦氏には、企業に対してCSRの取り組みをコンサルティングする立場からご登壇いただきました。畜産動物の福祉について企業評価を行い、その取り組みを促進するNGO、BBFAW(Business Benchmark on Farm Animal Welfare)が5月、英国のコラーキャピタル等合計1.5兆ポンドを運用する複数の機関投資家が畜産動物福祉の推進に署名したと発表、世界最大の機関投資家である日本の国民年金を運用しているGPIFもこの動きを無視できないのではないかとのお話がありました。

「『エシックス』が私たちの原動力―エシカル消費と企業の責任」小林弥生

英国発の自然派化粧品ラッシュの日本法人である株式会社ラッシュジャパンの小林弥生氏より、動物・環境・人権といった社会問題に積極的に取り組むラッシュの企業の姿勢についてご発表いただきました。企業規模が大きくなれば社会への影響も大きくなるという前提に立ち、倫理観を取り込んだビジネスモデルの構築から社員のモチベーションを上げるための環境づくりまで、エシカル消費社会にあるべき企業の一例を示していただきました。
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第三部 パネルディスカッション

「アニマル・ウェルフェアを進めていくための消費者の役割を考える」

最後は、CSRコンサルタントの山口氏をファシリテーターに迎えてパネルディスカッションが行われました。

●英国はどうなのか

前半は、先進国とみなされている英国の状況について、さまざまな角度からハリスン氏に質問が集中しました。英国ではエシカル消費運動・動物保護運動を進めるNGOがどれも歴史がありパワフルであること、そのベースには多様な存在を包摂する市民社会があることなど、世界をリードする存在としての特徴はあるが、そのようなバックグラウンドがなくてもSNSなど最新のツールを使った運動が奏功している事例も紹介されました。

また、20年ほど前、グローバル企業であるマクドナルドへの抗議活動に対して同社が訴訟を起こすという対抗手段をとったことがあるが、イメージダウンにつながり逆効果になったというケースを引き合いに、圧力団体としてのCSO(市民社会組織)の必要性を説明。

一方で、消費社会における企業のランキングなどをはじめとした「情報」に対して対価を支払う感覚が日本の消費者の間で薄れていることについて懸念が呈されると、日本だけではなく英国でも同様の状況であり、ガーディアンやタイム誌などジャーナリズムの世界においても新たなビジネスモデルの構築が模索されているとのこと。

細川氏からは、英国で普通参政権が付与されたのは最近であって、英国が民主主義の先進国とみなされている所以は異議申立の気風が強いからだが、これに比べて日本人は性質が極めて抑制的であり、いわば「観客民主主義」であるとの意見が出ました。

●消費されゆく動物は線引きされるのか

主催団体の一つである立教大学ESD研究所の所長で教授の阿部治氏からは、現在の環境倫理学の対象には野生動物は含まれているが家畜動物は含まれていないことに対する問題意識が示され、今後、動物福祉を含めた持続可能性に関する教育を広げていく必要があると述べられました。

●消費者はどこまで責任を持つべきなのか

消費されゆく動物たちへの配慮について、消費者団体こそ取り組んでいくべきではないかと水を向けられたサステナビリティ消費者会議代表の古谷由紀子氏は、このような情報が消費者にきちんと届いていない現状を踏まえて「消費者に期待しすぎるべきではない」と明言、今後は具体的な問題解決を視野に入れて、動物保護団体などから消費者団体に対する情報提供・コミュニケーションが必須であり、企業も含めたさまざまなステークホルダーによる横断的な取り組みが必要であると述べられました。

●「暮らしの手帖」消費者意識は変わったのか

9月末で終了したNHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルとなった雑誌「暮らしの手帖」。この雑誌の創刊当初から編集に携わってこられ、現在は企業等の組織の利他行動の社会心理をリサーチする小榑雅章氏が会場より発言。消費者を変えていくには、消費者にとって具体的にどんな利得があるのかという点を明確にしていかなければいけないという助言をいただきました。

これに対してJAVAの亀倉弘美より、これまでは金銭的・物理的な利得だったのに対し、化粧品の動物実験反対運動にみられるように、「自らの消費が誰かを搾取している」「自分が美しくなるために動物を苦しめ命を奪っている」という罪の意識から解放されることも、現在の消費者の利得であると説明しました。

また、PEACEの東さちこからは、かつては「動物実験が新たに行われた化粧品は人体にとって未知の化学物質が使われている危険なものだ」という消費者保護観点の主張もかなりなされてきたが、EUでの法的禁止を経て、日本企業も動物のために廃止を求める市民の声に耳を傾けるようになってきている、時代は変わりつつあるのではないかとの報告を行いました。

●まとめ

最後にハリスン氏より、
「今日の会議には、来場者も含めて、政府関係者、大学教授、企業関係者、消費者団体、動物保護NGOと、すべてのステークホルダーが集結している。
今日がまさに始まりの一日ではないか」
との言葉をいただきました。


朝10時から夕方5時まで、長時間にわたって多くの方々が動物をめぐる濃密な議論に耳を傾けてくださいました。これまで動物をめぐるイベントには動物に関心のある層だけが集まることが多かったように思いますが、今回は、化粧品、アパレル、食品、外食産業、流通小売、商社などの企業や、各種消費者団体、動物をめぐる専攻のある大学、動物保護NGOなど、さまざまな関係先にご案内し、またご参加いただきました。動物の利用・消費に携わる方々にお聞きいただき、個人として、また企業、団体、組織として、考えるきっかけ、行動するきっかけとなったのではないでしょうか。

また、今回のシンポジウムでは、私たちの暮らしと密接にかかわる動物たちの現状と今後について、社会全体で考えていくべき課題だと認識していただき、さまざまな分野の団体・個人の方々に登壇、後援、賛同、協賛をいただきました。改めてこの場をお借りしてお礼申し上げます。
また、ご来場くださったみなさまに心よりお礼申し上げます。


「エシカル消費と動物への配慮」というテーマに対する議論をこれで終わりにさせることなく、問題解決に向けて今後も積極的に取り組んでまいりたいと思います。

当日は混雑に取り紛れて、至らぬ点も多々あったかと思いますが、なにとぞご容赦いただければ幸いです。
うぞ引き続き、ご関心をお寄せくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

2016年10月9日

立教大学教授/ESD研究所所長 阿部治

NPO法人アニマルライツセンター代表理事 岡田千尋

NPO法人動物実験の廃止を求める会理事 亀倉弘美

PEACE~命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ

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