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野生動物の殺され方-ワナ

狩猟や駆除において、野生動物は、さまざまな方法で殺されています。

「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づき定められている「鳥獣保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」には次の記載があります。
‘捕獲個体を致死させる場合は、「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年総理府告示第40号)に準じ、できる限り苦痛を与えない方法によるよう指導する。’

(ただしこの部分が適用されるのは駆除などの「捕獲許可」のみ。狩猟は適用されません。)

ワナにかかった動物たちの状況

現実には、狩猟や駆除に関するインターネット上のブログや書物を読むと、ハクビシンやタヌキを箱ワナごと水につけて溺死させたり、撲殺したり、ワナにかかった猪やシカを槍で何度も突き、結果的に嬲り殺すような方法で行われてしまっていることが分かります。

殺される時だけではありません。ワナにかけられた野生動物は、捕獲者が「止め刺し(殺すこと)」にやってくる間もワナから逃れようと苦しみます。
農林水産省の「野生鳥獣被害防止マニュアル」には、「わなにかかった個体の長時間の放置は動物福祉上の問題もあるため、わなは毎日見回る。」あるいは「捕獲わなを設置した場合は、毎日見回る。 」などの記述があります。
しかし、これは徹底されておらず、アニマルライツセンターが止め刺しの方法の改善を要望していたある自治体では、ワナの見回りが週二回(火・金)というところもありました。金曜日の夜ワナにかかってしまえば火曜日までの4日間、ワナから逃れようと動物は苦しみまなければなりません。

駆除を行うある人の2012年10月10日付のブログには、ワナにかかったイノシシの肘の関節がほとんど切れて、腱と皮だけでつながっていた、という記述されています。逃れようとイノシシがもがいたのでしょう。

また、本からの引用ですが次のような書かれています。
「ある漁師に聞いた話では、捕獲した猪が恐ろしいほどにダニにたかられていたそうだ。その猪は前足が片方なかった。おそらくわなから逃れようとして必死で足を引きちぎって逃げたのではないかということだった。体が弱り、泥浴びもできずにダニの住処になったのだろう」
(「日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?」2014年4月10日発刊 田中康弘)

残酷ではないワナはありませんが、その中でも動物の体の一部を挟むくくりわなやトラバサミ(*)は特に残酷です。
下の動画は2013年6月から公開されている動画サイトからのリンクです。ワナにかかったシカがどのように苦悩するのかが分かります。

くくり罠やトラバサミ(*)ではなく、箱ワナならよいのか?


イノシシ・シカ捕獲目的で仕掛けられた箱ワナ。2014年10月撮影

箱ワナならいいというわけではありません。前述の通り、毎日見回りされない場合もあります。その場合、長期間飲水もできない状況に耐えなければなりません。熱暑の時期であれば、熱中症で死んでしまうこともあります。
動物たちは箱ワナの中で逃げようともがき続けます。

(2012年12月に公開されていた動画のリンク)


(2012年10月に公開されていた動画のリンク)


この箱ワナの中の動物を殺す方法も残酷です。檻の隙間から槍で何度も突いて殺すという方法が一般的に行われています。ひどく弱っているのでもない限り、箱ワナの中で動物は傷つけられながら逃げまどいます。

銃であれば苦しみは少ないかもしれません。しかし銃刀法により銃は誰もが日常的に所持し持ち運べるものではありません。民家が近くにあれば使用することもできません。また麻酔銃の麻酔は高価で扱うことができるのは獣医師などごく一部に限られています。

電殺

短時間で止め刺しできて作業者の労力が少ない方法として、近年電気止め刺し器が少しずつ広がってきています。この方法は動物にとって、苦しみの少ない方法でもあります。

2016年10月31日 日本農業新聞より
https://www.agrinews.co.jp/p39326.html
 長崎県農林技術開発センターなどの研究チームは、害獣用の電気止め刺し器を開発した。捕獲した鹿やイノシシを電気で止め刺し(殺処分)する。作業が素早く、安全にできるため、捕獲従事者の負担が軽減できる。(中略) 
 止め刺し器は、充電式バッテリー内蔵の電源ユニットと、害獣に電気を流す通電支柱などで構成する。支柱先端の通電針(先端電極)を、害獣の背骨付近に刺し、失神させた後、心臓や脳に近い首筋などに通電させて殺処分する。「取り出しやすいように、取り出し口にイノシシを追いやって止め刺しする。最初は失神に20秒、2回目も20秒ほど電気を通す。1分で作業が終わる」と粒崎さん。出血もなく、殺処分までが早い。(中略) 
 「とにかく作業が安全」と粒崎さん。成獣のイノシシは100キロを超えることもあり、暴れると、箱わなを壊すほど危険。以前は、ロープやワイヤをイノシシの体に絡めて固定して殺処分していたが「大き過ぎると5、6時間かかることも。手が出せず、弱るまで2、3日待つこともあった」と話す。
 粒崎さんは、地元集落内の10箇所ほどで箱わなを管理する。以前は年間20頭ほどの捕獲が、いまは100頭を超える年もあるほど。今年は8、9月だけで74頭を捕獲。殺処分から箱わなを再び仕掛けるまで短時間にできることで、捕獲頭数増につながったとみる。

兵庫県でもこの電気止め刺し器の導入がすすめられているようです。
兵庫県議会 平成28年度予算特別委員会(第7日 3月10日)より(太字は当法人が強調)
http://www.kensakusystem.jp/hyogopref/cgi-bin3/ResultFrame.exe?Code=6m2nv7auxdpyloegec&fileName=H280310B&startPos=-1
○(和田有一朗委員)  では、早速質問に入る。
 まずは、イノシシの管理についてである。
 鹿やイノシシ、猿が農作物を食い荒らす。野生鳥獣による本県への農林業被害はここ数年減少傾向にあるものの、直近で年間6億円以上となっている。生物多様性への悪影響なども含め、特に、鹿やイノシシなど特定の獣種についての被害は深刻であり、これら鹿、イノシシによる被害が7割を占めている。
 イノシシについては、六甲山地に隣接する都市部において餌付けにより人慣れした個体による生活環境被害や人身被害も生じている。
 昨年5月に改正施行された「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」では、野生動物の管理を目的に明記し、増え過ぎた動物の数や生息地を適正にすることが管理と定義されたことから、本県では、これまでの第2期イノシシ保護管理計画を廃止し、新たにイノシシ管理計画を策定して、管理を進めていくこととなった。
 丹精込めて育てた作物を荒らされた農家の皆さんの深い嘆きは理解でき、継続的に被害が発生している地域では、適切な捕獲も有効な獣害抑制手段の一つであると一定程度認識はするものの、その捕殺方法について、例えば、わなにかかったイノシシをどうやって捕殺しているかというと、中には、やりで突いて殺すということもあると伺う。子供たちが見ても教育上大変良くないような状況も、現場では行われていると聞く。
 これら管理動物の捕殺について、命の尊さの念を持って、残虐性のないものにできないか、所見を伺う。


○環境創造局長(濱西喜生)  イノシシによる農林業被害は、平成26年度において2億4,400万円で、初めて鹿を上回る被害額となった。このため県では、28年度から新たに年間捕獲目標を1万5,000頭とし、生活被害が拡大している地域も対象に、捕獲の推進に取り組むこととしている。
 捕獲方法について、近年、わなによる捕獲の割合が高まりつつあり、狩猟期では捕獲数の4分の3を占めている。わなによる捕獲では、捕獲後に「とめさし」--殺処分を実施する必要があるが、銃器による場合は猟銃所持者に限られ、また使用場所も制限されること、やりなど刃物による場合は安全性、確実性が低いことなどから、集落主体の捕獲対策を推進する上で課題となっていた。
 このため、平成23年度に森林動物研究センターが、従事者の安全性にも配慮した電気を用いた「簡易電殺器」、「電気とめさし器」とも言うが、これを開発した。これは通電により、瞬時に意識を消失させ、心停止に致らせ、流血もないことから、動物へ与える苦痛も少ないものである。
 これまで中播磨、西播磨、但馬の各地域において導入促進を図るとともに、27年度には、「イノシシ捕獲プロジェクト淡路島モデル」により、淡路地域を対象に導入支援を行った。
 今後も、市町・集落・猟友会との連携のもと、「ストップ・ザ・獣害」事業による、防護柵を利用したわな捕獲の全県展開と併せて、子供たちへの影響にも配慮しつつ、残虐性の少ない捕殺方法の普及に努めていくので、どうかよろしくお願いする。


○(和田有一朗委員)  「電気とめさし器」でということであるが、中には、現場では、まだ非常に見るに見かねるような状況があると伺う。後でも何回も申し上げていくが、これは命を相手にしていることなので、その辺り、しっかりと配慮していただきたい。

兵庫県 農政環境部環境創造局鳥獣対策課に確認したところ、まだ兵庫県全域で導入されているわけではありませんが、市町村から「電殺器を導入したい」という要望があった場合に県が導入支援をしているとのことでした。

駆除-殺害することで解決するのか?
電気止め刺し器は、槍で何度も突いたりするよりは人道的な方法です。しかしアースとなる檻のないくくり罠などでは動物を保定することが簡単ではなく、電気止め刺し器を使用するまでの保定の段階で、動物は苦悩しなければなりません。
また前述の日本農業新聞の記事にあったように電気止め刺し器を使用することで「以前は年間20頭ほどの捕獲が、いまは100頭を超える年もあるほど」になったとしても、それはいたずらに殺害する動物数を増やす行為にしかなりません。

鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律に基づき定められた「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための施策を実施するための基本的な指針」には以下のような記載があります。

被害の状況

① 農作物被害
農林水産業に多くの被害を及ぼしている鳥獣の捕獲数は、15年前と比較してイノシシは約12倍、ニホンジカは約6倍、ニホンザルは約4倍に増加している(平成24年度)にもかかわらず、各都道府県からの被害報告によると、近年、鳥獣による農作物の被害金額は200億円前後で推移し、平成25年度の被害総額は約199億円となっている。これを種類別にみると、特に、イノシシ、ニホンジカ、ニホンザルによる被害金額が、獣類被害の約9割を占めている。

殺害数を増やしても、農作物被害の根本的な解決にはなっていないのです。廃棄する農作物の適切な処理や草がぼうぼうの耕作放棄地の整備など鳥獣を引き寄せない営農管理や侵入防止柵の設置など防御など、鳥獣が棲みにくい環境を整備し、里と山の「すみわけ」を行う環境整備こそが、問題の解決につながります。

自治体への要望

お住いの都道府県に、狩猟や駆除の際にくくり罠やトラバサミ(*)のような非人道的なワナを廃止すること、鳥獣を殺害する際には人道的な方法で行うこと、ワナの見回りを毎日行うことを求めてみてください。また駆除ではなく防御に重点を置いてもらうよう要望してください。
年々野生鳥獣の殺害数は増加しています。私たち一人ひとりの声で苦しみ殺されていく動物を救うことができます。
狩猟や駆除において、非人道的な行為を目撃したらアニマルライツセンターまで通報してください。関係者に改善を求めます。
http://www.arcj.org/action/00/id=626

*トラバサミは狩猟ではすでに禁止されています

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