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豚コレラ ホロコースト再び

2018年9月9日、豚コレラ(classical swine fever)が発生したとして岐阜県岐阜市で610頭の豚が、そして2018年12月24日に今度は7547頭が殺された。

9月3日に急死した豚の検査依頼があり、9日に判明、24時間以内に610頭が殺されるという。豚コレラに感染すると日本では死亡率100%と言われている。研究では幼い豚であれば死亡率は70%(*1)だとされているので、100%といい「殺処分当たり前」のように思わせるのは誤りだろう。とはいえ、豚コレラはアニマルウェルフェアを著しく低下させる病気であり、拡大させないことが第一ではあることは確かだ。

初期症状は食欲の低下や元気がなくなるという一般的なものでわかりにくく、最終的に発熱、食欲不振、嗜眠、結膜炎、呼吸器徴候、便秘、下痢、および神経学的兆候などを示し、12週以上の豚では死亡する。

1件目の養豚場は、1棟の小規模農場だ。地図で確認すると豚の使用面積は約670平米ほど、そこに610頭の豚が収容されていた。中の構造にもよるが、この飼養面積は通路などを考えると、一頭あたりにきちんと横たわれるスペースはなかっただろう。1例目は80頭あまりが検査中に死んでおり、1棟にこれだけの豚が詰め込まれ、発熱や痙攣などで苦しんだかと思うといたたまれない。

さらに、12月に入り、岐阜県畜産研究所や大学などで豚コレラが発生、そして12月24日にこれまでの小規模農場ではなく中~大規模な農場で発生、7547頭*2が28日までに殺される(報道では8000等と報道するものもあり)。ここは繁殖から肥育までを行っており、うち871頭は母豚だ。およそ8500㎡の豚舎に7547頭が飼育されており、1例目とさほど変わりのない飼育密度であろうと考えられる。消毒の設備や外部からの大型の動物の侵入防止などは他の養豚場よりは整っているように見える。出荷直前の検査で判明したとのことだが、衛生面に気を使っていたとしても大規模農場において肥育されている豚の体調をどこまで監視できていたかは疑問だ。

殺処分

原因が何であれ、すべての動物が薬殺(逆性石けん液静脈内投与(2ml/10kg))、電殺、二酸化炭素ガス等の方法によって殺処分される。薬殺としているが逆性石けん(モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)を主成分にした消毒剤)および二酸化炭素ガスは、動物福祉に配慮されるとは全く言えない。

今回は電殺によって行われたとのことで、かつてより改善が見られる。
しかし、課題はある。

マニュアルが整備されていない

発見から検査、確定までの手順は事細かに記されているが、本来最も配慮されるべきであり、かつ実務者も最も戸惑う部分である殺処分についてのマニュアルが整備されていないのは問題である。アニマルライツセンターからもHumane Slaughter Associationの内容およびOIE動物福祉規約に即したマニュアルの整備をお願いしたところであるが、本来であればより早い段階で整備されるべきであっただろう。今後の動きを注視したい。

自衛隊派遣はどうなのか

7500頭の殺処分や後処理には自衛隊が派遣されている。動物の扱いに慣れない、または適正を持たない可能性のあるいわゆる素人が動物を扱うのは恐ろしいことだ。また、人々を守り時に銃器を持つ業務をする自衛隊員に、殺す業務をなんらかの形で補助させることは精神衛生上誤りであろう。彼らは畜産業の負の部分を担うことを目的には、自衛隊に志願していないはずだ。

どうしたらいいのか

感染経路などについて、考えうるものは多々あるが、アニマルライツセンターはそれを考え発言する立場にはない。しかし、動物の犠牲の全ての原因が畜産業にあり、また畜産物や不可食部分つまり肉食と堆肥や体毛、皮革の異常な量の利用にあることは確かだ。

鳥インフルエンザ同様に、ホロコーストが生み出された。そして鳥インフルエンザ同様に、環境中に出てしまったウイルスを封じ込めることは、困難であろう。

現在中国で猛威を奮っているアフリカ豚コレラについて、2018 年 10 月に北京 で FAO と中国国際農業協力促進協会(CAPIAC)が開いた The second World Conference on Farm Animal Welfare(第2回農業動物福祉世界会議)では、同協会副会長のXi Chunling氏が「低密度で飼育されている豚はアフリカ豚コレラのような病気に感染しにくい」と述べている。

ウイルスに触れたからと言ってすべての動物が感染し発症するわけではない。弱い個体から死んでいく。

答えはひとつだ。

今のような大量消費をやめ、1平米に1頭の飼育密度で豚を飼育することをやめ、ストレスを掛けるのをやめ、運動と太陽光と健康な土のある環境を与え、動物に生まれてきた喜びを与えることだ。
6ヶ月以下の赤ちゃん豚が、下には糞が溜まったすのこ状の床の上(もしくは糞尿でつるつると滑る床の上)、檻をなめ、咳をし、自分と仲間の糞尿にまみれ、同じ餌を食べ続けるような環境にいるべきではない。

これらの感染は今後も同じように畜産業の中で発生し続けるだろう。

「殺処分」がかわいそうだと心のどこかで感じるのであれば、食べない選択をしてバイオリスクを減らしてはどうか。
ただ見守るのではなにもかわらない。
消費者が今日お金をどう使うのかで、動物たちの未来が変わる。

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