アニマルライツセンター

  1. イルカショーと繁殖からの解放、ハニーをサンクチュアリへ

    2018年1月に閉館となった千葉県銚子市の水族館「犬吠埼マリンパーク」に、ハンドウイルカの「ハニー」がたった一頭で取り残されています。4頭いた他のイルカたちはすでに死亡しています。犬吠埼マリンパークはハニーの現状や譲渡先などの問い合わせにも一切応じません。 ハニーの今 ハニーは屋外のプールにいます。天候の悪い日も、孤独な中で耐えるしかありあせん。背中の皮膚がひび割れており、頭を上下に揺らすだけの常同行動を無気力に繰り返していました。海匝保健所に問い合わせたところ「空気が乾燥しているため皮膚も乾燥しているが、グリセリンで対応している」との回答でした。しかし、専門家によると「内部疾患でガスが溜まっているために潜水できず、その結果の日焼けではないか」との見解もありました。現在は皮膚疾患はある程度治癒しているとのことですが、相変わらず無気力にプカプカと浮いている状態です。群れで暮らすイルカにとって、たった一頭でいるということは相当なストレスのはずです。狭いプールのきれいとはいえない水質という劣悪な飼育環境だけでなく、精神的な問題を抱えていることが深刻であり解決が急がれます。 ハニーの状況改善と健康状態などの情報の開示をもとめて「イルカのハニーを助けて!ハガキアクション」が展開されました。予想以上の反響と拡散にテレビや新聞も注目し、いまや社会問題にまでなっています。 ハニーのこれまで ハニーは太地町のイルカ追い込み猟で捕獲された野生のイルカです。イルカ追い込み猟は食用を前提として捕獲するため、ハニーの海の家族はイルカ肉として捕殺されました。人間に家族を殺されたイルカのイルカショーを、人間の家族が娯楽として楽しんでいるのです。これは野生の動物にたいしてあまりに理不尽な仕打ちではないでしょうか。 イルカは一日のほとんどを餌を探すことに費やします。水族館では人間から餌を与えられるのを待ち、人間に与えられた命令をこなすだけの日々。それは本能を奪われた姿です。 ハニーが犬吠埼マリンパークに入れられたのが2004年から2005年ごろです。そして2005年の6月に「マリン」を出産しています。ハンドウイルカの妊娠期間は約1年ですから、ハニーは捕獲された時にはすでに妊娠していたのではないかと考えられます。しかしハニーの子ども、マリンは犬吠埼マリンパークで死亡してしまいました。 イルカは母親を主体とする、社会的な結びつきの強い群れを形成します。母親が餌をとりに行っている間は若いメスが深く潜れない子どもの面倒をみるなど、群れ全体で子育てをします。捕獲されなければハニーは広い海で、成長したマリンと親子で暮らしていたかもしれません。あるいはハニーがリーダーとなり、自分の群れ=家族を築いていたかもしれないのです。 イルカショーで利用するには若いメスが好まれます。イルカショーのための繁殖可能なメスの捕獲は、自然での群れの形成の可能性を消滅させ、生まれるはずだった多くの生命を奪ったことになります。 現在、水族館では繁殖に力を入れていますが、人工繁殖で生まれたイルカの赤ちゃんの生後一年の生存率は10~20パーセントと低く、成長できたとしても短命に終わることが多いのです。 イルカショーと繁殖から解放を イルカショーは水族館にとって重要な収入源です。水族館の存続と、一時の娯楽でしかないイルカショーのために、人間はハニーからイルカとしての生涯を奪ってしまいました。彼女は水族館とイルカショーの犠牲者です。 ハニーをより良い環境へ移すことが望まれます。しかし他の水族館に譲渡されることがゴールではありません。ハニーをイルカショーと繁殖から解放するべきなのです。ハニーを人の視線にさらし、赤ちゃんの死亡率の高い人工繁殖に利用して再び別離の悲しみを与えてはなりません。 海に戻すにはもとの生息地の、もとの群れに戻すのが基本です。しかしハニーは太地で捕獲されたイルカですから、太地に戻れば捕殺されてしまいます。そしてハニーがいた群れはイルカ追い込み猟によってすでに全滅しているでしょう。たとえ捕獲から逃れたイルカがいたとしても、猟によるストレスを抱えたイルカが仲間を失って生き延びることは難しいからです。 そのためサンクチュアリ(擬似自然保護区)へ移すことがハニーにとって最善であると考えます。 サンクチュアリでは保護海域において捕獲から守られ、本来の生息地に近い環境で暮らすことができます。季節の変化を感じたり、コミュニケーションをとって群れを形成することもできます。本能を満たすための適切な刺激は動物にとって必要です。そのために今後も海外と交渉と要望を続けていきます。「生体展示」から「保護」へ。ハニーがイルカとしてイルカらしい生活を取り戻すことが最終目標なのです。 イルカのハニーを助けて!はがきアクションはこちらから http://animals-peace.net/honey/ <サンクチュアリについて> ボルチモア国民水族館がイルカサンクチュアリ計画公表 http://animals-peace.net/wildlife/dolphin/baltimore.html 動物園を廃止することを決定したコスタリカ http://www.arcj.org/animals/zoo/00/?id=948&pageID=5 畜産動物の楽園 ファームアニマルサンクチュアリ http://www.hachidory.com/animal/00/id=451 チンパンジーのサンクチュアリ http://www.arcj.org/animals/zoo/00/id=623 <動物ジャーナリスト佐藤榮記監督「どうぶつ千夜一夜」のハニーの動画> 2018年1月31日号/第193夜 ~突然閉館・犬吠埼マリンパーク閉館前日の風景 編 どうぶつ千夜一夜/2018年7月16日海の日号/第308夜 ・最新情報。イルカのハニーさんは生きているか?編

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  2. 講演会「人間”をかんがえるための動物のはなし」レポ

    7月17日(土) 八王子「まなびつなぐ広場」市民グループのサポートでアニマルライツセンターの岡田千尋さんをお招きして、上記の内容で2時間ほどお話をしていただきました。 テーマは<食としての動物の現状>つまり畜産です。 多くの方達にとって「動物問題」というのはペット問題?畜産・動物実験などと聞いても知らないし、ベジタリアン、ヴィーガンなどの単語、動物好きの偏った人たちと解釈され、好きな肉について何やら追求されそうな気がしてうっとうしい・・のではないかと、それが大多数の方達の反応で、とくに肉好きの方達にとって自分の食生活について、健康指導は別として他人にとやかく批判などされたくはないのではないかと気にはなっていました。 その「食の聖域」にどうやって食い込んでいくのか? 欧米ではポールマッカートニー、シュワルツネッガー、ジョニーデップなど多くの有名人がVegan宣言をしていますし、運動推進力もあるので一般の方達の中にもすんなり・・かどうかは分かりませんが結構理解可能です。少なくとも私の海外の友人たちは、特に動物問題に関心はなくとも皆「菜食」は当然の事として問題はありません。セラピーや瞑想などに関心のある方達にとっては、完全ではなくてもあまり肉を食べないというのは、肉体の自然の選択なのです。 日本は本当にこれからですね。歴史的には明治以前は「菜食」だったのに、西洋化が進んで「肉を食わないと勝てない!」みたいな感覚が蔓延している異常状態。 周辺地域に広げる活動 私の行動戦略としては、アニマルライツの有志が行っている路上の動物写真・デモ行為だけでなく、地域の市民グループ、反原発、政治的キャンペーン活動の人たちと交流しながら『未来につながる、持続可能な、人と地球との関わり方』への模索を試みる。 原発を自然エネルギーに変える事と同様の、「食」の領域での世界規模の大きな変革の一旦として理解してもらおうと思っています。つまり「周辺地域」に住む方達への「啓蒙活動」です! どう受け入れてもらうか アニマルライツセンター岡田さんの話は、今回参加された20名以上の方達にとって、充実した新鮮な情報と受け取られたように感じました。ただし、彼女が話した聞き慣れない膨大な情報を咀嚼し、菜食に移行するには時間がかかるとも感じました。 彼女の話の素晴らしさは、多くの情報を映像や数字と共に提示出来るクールさです。 30年程前、私が初めて動物関係のグループに参加した時は、どちらかというと「可哀相」という強い情動的な力で動いていたように記憶しています。私自身は今も基本そうですし、それは動物運動には絶対不可欠の活動の推進力でもあると思います。しかし、動物に関心のない人たちに、その気持ちだけで訴えてもあまり意味ないでしょう。 戦略としても、感情から一歩離れた多角的なアプローチが必要になります。 データを出来るだけ多く持ち多角的な角度から接触可能なスキルを持つ。何故、動物を殺してはいけないのか? 何故肉食からVeganに移行する べきなのか? 世界の趨勢はどうなのか? 温暖化に影響する畜産の情報。土壌・水質・大気汚染と工場畜産との関係。植物性蛋白の畜産動物の消費量の膨大さが世界の「飢餓」にどのくらい影響しているか? 動物生育時に注入されるケミカル、恐怖で殺される動物たちがその瞬間、アドレナリンなどの体内ホルモンを放出させ、それがどのくらい人に健康被害をもたらしているか、等々。  とても大切なことは・・・動物たちは、人間が思っている以上に、知性、感情、感覚があり今彼らが強制的に置かれている状況が、この上なく残酷で耐え難い苦痛に満ちたものであることを知って、感じてもらうことの大切さ・・それをもたらしているのは・・・人が持っている偏見。『人間以外の生命体には倫理など無用」という鉛のような独断=「種差別」なのです。人間同士にも差別があり、それが「戦争」へと駆り立てる要因ですが、動物は人と戦う力はなく、圧倒的に迫ってくる暴力の中でもがき苦しんで、死ぬしか無い。 日本人の感覚を取り戻す 『生きとし生けるもの』という昔からの美しい言葉が仏教の中にはあります。その言葉の中に含まれる、限りあるいのちに対する深い「慈悲と倫理」の感覚を日本人である私達は本当は知っているはずなのです。あらゆる方法を駆使して人々の心の中に取り戻してもらいたいものです。 岡田さん、今回のレクチャーありがとうございました。又、機会がありましたらお願いしたいと思っています。連帯しないとね!(笑) 結果、皆さんの反応は決して悪くはありません。メールもいただきました。 事情もある程度は理解し、動物たちを食べてはいけないと感じながらも、今までの食生活を変えることの困難さを訴える内容もありました。家族や子供たちが居ればそうかもしれないですよね。私としては「少しずつ肉食を減らして行きましょう」とだけ返事をしましたが、<MEAT FREE MONDAY>も過程としてのプロパガンダとしては使えるかもしれないと思いました。 日本以外のヨーロッパ・USAの国々では、「地球に優しく、動物を苦しめない」為の様々な試みがなされているようです。(彼らが肉食の主要国ですが) 諦めず、期待もしすぎず、たゆみない活動を続けていきたいと思います。 愛する動物たちのためにContinueです! 文責 ウジイエヤスコ

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  3. 癒しの代償・生涯を奪われたイルカたち

    ハンドウイルカの「ハニー」 彼女は野生から捕獲され、仲間や家族と離れ離れになりました。 犬吠埼マリンパークのプールにとらわれ、イルカショーと繁殖に利用されました。 そしていま、プールにいた仲間や彼女の子どもまでも次々と死んでしまい、閉鎖されたマリンパークに取り残された「ハニー」はひとりぼっちです。 台風や厳しい暑さ、そして孤独を屋外の小さなプールで耐えています。 私達はサンクチュアリへの譲渡を要望しています。 オキゴンドウの「セーラー」 彼女は新江ノ島水族館のショーに出演していました。 ショ…

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  4. 週刊金曜日 動物の飼い方Q&Aを執筆しました

    週刊金曜日 8月24日号(週刊誌)は動物愛護管理法と動物福祉特集が組まれました。 アニマルライツセンターと、JAVA、PEACEで動物福祉を考えてもらえるきっかけにと、 「あなたは大丈夫?知っておきたい動物の飼い方、接し方 Q&A」 を執筆させていただきました。 私達のパートナー動物についての考え方を読者にわかりやすく伝えています。 Q1 猫を買いたいのですが、ペットショップに行けばいいですか。 Q2 猫嫌いの知人が、庭に糞をする猫を捕まえて保健所に持っていくと言っています。そのあとはどうなるのでしょうか。 Q3 近所の犬が炎天下、鎖で繋がれています。苦しそうなのですが、何かできますか。 Q4 いま犬を買っていますが、歳をとってきたので私が先に死んでしまったらと思うと心配です。どうしたらいいでしょうか。 Q5 ワニとか大蛇に興味があります。飼っても問題ないですか。 Q6 幼稚園でヒヨコやヤギなどに触るふれあい動物園を呼ぶのですが、問題はないでしょうか。 また動物福祉協会が告発した福井県の劣悪ブリーダーの事件の経緯や課題も掲載されています。 週刊金曜日は書店またはこちら(Amazon)(週刊金曜日 2018年8/24号)から購入できます。 ※他の執筆者の記事も掲載されています。すべてARCと同じ意見ということではありませんのでご注意ください。

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  5. リアルファー生産はホラー。リトアニアの毛皮農場で明らかにされた共喰いの残酷さ

    新しい調査映像が、リアルファー生産過程でよく起きる”共喰い”のむごさを明らかにした。 今回の調査映像は2018年夏に撮影されたリトアニアの毛皮農場のものである。 逃げ場のないケージの中で、生きたまま兄弟や姉妹に内蔵まで食われていく。食われる動物は痛みを訴え、必死に逃げようとするが、家族を食う動物たちに一度失われた正常な判断力が戻ることない。肉を少しづつ食いちぎり、内蔵を引き出していく。 このように、脳みそがむき出しになったり、耳やしっぽが食いちぎられたり、喰い殺されていくことは、世界中の毛皮農場ではしばしば観察される。しかし、その死ぬまでの間、どのように苦しんでいるのかを記録されたことは、これまでなかった。 これは毎日起きていることだ。運が良ければ、ヨーロッパでは消毒剤を振りかけられることもあるが、それだけだ。獣医による治療は全く行われておらず、放置される。 本来、ミンクのような野生動物は、ケージの生活には適していない。毛皮農場で飼育されているミンクは運動し、遊び、泳ぎ、巣を作り、狩猟するといった基本的な自由を一切奪われる。 多くの動物が、小さなケージの中で精神的な異常をきたし、結果的に攻撃的になりやすい。攻撃を受けた弱い動物は、自然下でするように隠れたり、逃れたりすることができない。 他にも、仲間に攻撃され、血で汚れているミンクもいた。骨が露出し、手足が失われ、溜まった糞尿の上に血が垂れ落ちていた。生まれたばかりの赤ちゃんミンクは、震え、明らかな苦しみの兆候をみせていた。 日本国内の毛皮産業は2016年を最後になくなった。しかし、日本は2017年には約150万頭分の動物の毛皮を消費している。リトアニアの200万枚の毛皮の多くはオークションを経て、世界中に売られる。その多くは中国で加工される。マフラーやらトリムやらピアスやらに形を変え、最終製品が日本にも入っていることは間違いがないだろう。 リトアニアの毛皮農場を撮影した調査員ジョンは、この調査で目的したもののことを、「今まで見たものの中で最も嫌なもの」であると語った。 ホラー映画が現実になったかのようだ。しかし映画の中で被害者はこんなに長く苦しまない。狂ったように家族が助けを求める家族を喰う姿を見た後に、消費者はリアルファーが付いた商品を身に着けたいと思うだろうか。共喰いはここだけで起きているのではない。ヨーロッパ中の毛皮農場で起きている。小さなケージの中で動物を飼育するということは、そういうことだ。 調査で明らかにされた虐待や傷害についての情報は関連する獣医当局(VMVT))に通知された。今後当局は検察当局と協力して、責任者を追求しなくてはならない。しかし、獣医当局はこの毛皮農場に年数回立入検査を行っているとしており、その際には負傷した動物は隔離され治療されていたとしている。事前通告して行う立入検査や見学が、なんの真実にもたどり着かないということを、強く主張したい。不都合な事実は、常に隠されている。 毛皮農場からくる毛皮は、すべてゼロにする以外、残酷さはなくならない。様々なエシカルな選択肢がある現代社会において、ファッションに動物の犠牲はいらない。アニマルライツセンターは動物の毛皮ゼロを目指した署名活動を行っている。

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  6. 子牛用ハッチはドロドロ。雨の日は地獄だった

    信じられない光景だった。 高く売れるため比較的大切に扱われる牛。 この状態なの・・・? 子牛はドロドロの汚物に浸かっていました。 日本のとあるブランド牛の肥育場、2018年6月の様子です。…

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  7. 9月1日(土)アニマルライツセンター定例ボランティア会議のお知らせ

    2018年9月の定例ボランティア会議のご案内です。 アニマルライツセンターの活動に参加したいと考える方であれば、どなたでも参加可能です。会員ではなくても大丈夫ですので、ぜひご参加ください。参加連絡は不要です。 概要 日時:2018年9月1日(土)15時30分~17時  会議の場所:アニマルライツセンター事務所 東京都渋谷区宇田川町12-3ニュー渋谷コーポラス1009 電話:03-3770-0720 アクセス:JR・地下鉄・井の頭線 渋谷駅 徒歩7分 毎回真剣な議論がかわされます。 ※動物問題の…

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  8. ARC活動家向け勉強会 言説が人に与える影響 ~ARCのレトリックより~

    2018年9月1日土曜日、アニマルライツセンター活動家のための勉強会を開催いたします。 [言説が人に与える影響] ~ARCのレトリックより~ ・相手が受けとめやすい伝え方 ・怒りの処理方法 について、会員の市原よりご紹介させて頂きます。 街頭スピーチ・デモ行進等のレトリック分析のほか、心理学・脳科学・精神医学の方面からも簡単な考察を加えていく予定です。 質問・ディスカッションも予定しております。 講師:アニマルライツセンター メンバー 市原寛子 時間割 13:00~13:45 アニマルライ…

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  9. 薬剤耐性菌の恐ろしさ:鶏肉の半分以上から薬剤耐性菌

    2018年8月、鹿児島大学病院で8名*1、静岡市立病院で2名*2の方が、多剤耐性アシネトバクター(MDRA)に感染し、死亡したと報じられた。 これら多くの抗生物質が効かなくなった薬剤耐性菌の影響による死亡者数が2050年には1000万人になると予測されており、今回のような報道を見るとその現実味が増す。 畜産と薬剤耐性菌 日本は抗生物質(抗菌剤)使用量の約3分の2を畜産分野が占めており、畜産分野での取り組みは急務だ。 アニマルライツセンターは多剤耐性菌(以下薬剤耐性菌という)のリスクを減らすためには、畜産動物のアニマルウェルフェアが必要であることを主張している。この主張は世界では当然になっているものであって、FAO(国際連合食糧農業機関)も、OIE(世界動物保健機関)も、ワンヘルスやバイオセキュリティのためにアニマルウェルフェアが必要であるとしている。 単純に畜産分野での抗生物質を減らせばよいのではない。アニマルウェルフェアの5つの自由を担保することなく、安易に抗生物質の使用を減らしてしまえば、ただ単に動物が苦しんで死んでいくだけ、より病気が蔓延し、バイオセキュリティが崩れるというひどい結果になるだろう。そうなれば、今ですら保たれていない動物の最低限の福祉は、更に悪化することになる。 こういった考え方を理解することはそれほど難しいことではない。自分の免疫力が高まっていれば病気に勝って、低くなれば負けるということも、継続するストレスや精神的恐怖や不安や劣悪な環境は免疫を下げることも、通常の認識能力や常識があればわかることだ。 しかし薬剤耐性菌とアニマルウェルフェアの関係性についての認知度が上がっていない理由は、その医学用語やら病名やら薬剤名の難しさにある。畜産がどう人間への危険性につながるのか、整理してみよう。 畜産から人間へどういう影響が? 畜産と薬剤耐性菌の関係性でわかりやすいのは、以下の2つだろう。 畜産物や農場からの伝播の可能性 人にとっても重要な抗生物質が効かなくなること 1はとてもわかり易い。 動物自身が薬剤耐性菌をすでに持っていて、薬剤耐性菌入りの畜産物を消費者は多数食べているし、微量だが畜産物に抗生物質自体が含まれていることがある。 薬剤耐性菌入りの畜産物を消費者は多数食べている 2018年3月31日の日経新聞などが「薬効かない菌、鶏肉の半数から検出」と報じた*3。厚生労働省の食品の安全確保推進研究事業で2015年度 ~ 2017年度の3年間行われた食品の薬剤耐性菌の状況を調査したもので*4、ESBLという薬剤耐性菌が国産の鶏肉69%から検出されたという衝撃的な内容を含んでいた。 このESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌)は薬剤耐性菌の一種で、多くの抗生物質が効かない。その強い菌が、市販されている鶏肉に高頻度に含まれているということだ。しかも国産のほうが割合が明らかに高い。 鶏肉からのESBL検出割*4 国産鶏肉 輸入鶏肉 2015年 77.1% 75.4% 2016年 81.7% 66.7% 2017年 48.2% 15.9% 3年間平均 69% 52.67% 鶏肉だけでなく、採卵鶏の糞からも検出されている。 また他の研究でも立証されており、例えば香川大学の研究では市販鶏肉では 68.0%がESBLを保有していたという*5。 オランダの2017年の研究では鶏肉よりも牛肉のほうが暴露される割合が高いという結果も出ている*6。これはもう一歩進んだ研究で調理方法も関連付けており、牛肉のほうが火を通しきらないことが多いので暴露されやすいと結論づけている。 畜産物に抗生物質自体が含まれている 基準値を上回る抗生物質自体が肉や卵自体から検出されることはあまりない。基準値を超えている場合は食品衛生法により違法になる。ただし基準値以下では、含まれていることがある*7。 厚生労働省が規定した基準値を安全と感じるかどうかは、人それぞれかもしれないが、含まないことに越したことはないだろう。だってあなたは病気で治療をしたいわけではないのだから・・・ 2は、より人を脅かす可能性がある。 薬剤耐性菌はなかなかの勢いでより強くなっていく。人が抗生物質で重篤な病気を治療しようと思ったとき、もはや効かなくなっている ということになる。感染が怖いのではなくて、「薬剤耐性菌は治療しようとしたとき薬がない!」という状況を産み出すことこが怖いわけなのだ。 畜産動物に与える抗生物質と、人の治療に必要な抗生物質は共通のものが多数ある。耐性菌の成長は人には止められないが、畜産動物を使って、耐性菌の成長を促進してしまった可能性が高いというわけだ。 最後の切り札 コリスチンの耐性を持つ菌が日本でも! 大多数の抗生物質が効かない薬剤耐性菌に感染した場合、慎重に、より強い抗生物質を投与することになる。次なる薬剤耐性菌を生み出してしまう可能性があるため、病院はできるだけ抗生物質は使いたくないと考える事が多いようだが、そうも言っていられない時が来る。 今、最後の切り札といわれている重要な抗生物質が、コリスチンだ。 冒頭の多剤耐性アシネトバクターに感染した際にも有効である可能性がある。 感染症治療ガイドなどの海外のガイドラインでは、他の系統の抗生物質で効果が認められなかった多剤耐性をもつ感染症の治療には、コリスチンを用いた治療が推奨されている*8。国内でも抗生物質使用ガイドラインなどに掲載されるようになっている。 この重要な薬剤は、他の抗菌薬に耐性を示した以下の菌などへの感染時に使われる。 多剤耐性グラム陰性桿菌 多剤耐性アシネトバクター(MDRA) 基質特異性拡張型 β―ラクタマーゼ(ESBL) 多剤耐性緑膿菌( MDRP) 多剤耐性グラム陽性球菌 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) でも、これまでコリスチンは、畜産分野で飼料添加物(予防目的)としてたくさん使われてきた。 しかし、2015年11月に中国で豚や鳥からmcr-1という耐性遺伝子を持つコリスチンの耐性菌が発表され、大騒ぎになった。中国は直ぐに対応、翌年7月26日に飼料添加物としての使用停止を発表*9、発表から8ヶ月という速度の対応がなされた。 mcr-1は日本やその他の国でもすぐに発見され、上述の厚生労働省の食品の安全確保推進研究事業*4でも2年連続で検出されている。 2015年はまだ検査自体がないが、2016年の調査では市販食用肉の鶏肉14.5%/豚肉2.0%が、2017年の調査では市販食用肉の鶏肉14.15%/豚肉1.58%が、mcr-1を保有していたという。 そして日本でも、食品安全委員会はコリスチンの危険性を中程度のリスクとして、2018年7月にようやく飼料添加物としての使用を禁止した。 「硫酸コリスチンを家畜に使用することにより選択される薬剤耐性菌が食品を介してヒトに伝播し、ヒトが当該細菌に起因する感染症を発症した場合に、ヒト用抗菌性物質による治療効果が減弱又は喪失する可能性及びその程度」を調査し、「硫酸コリスチンが、動物用医薬品又は飼料添加物として家畜に使用された結果としてハザードが選択され、これらの家畜由来の畜産食品を介してヒトがハザードに暴露され、ヒト用抗菌性物質による治療効果が減弱又は喪失する可能性は否定できず、総合的にリスクを推定した結果、リスクの程度は中等度であると考えた。」と結論 食品安全委員会薬剤耐性菌に関するワーキンググループ ※コリスチンはカナダ、米国、オーストラリアでは畜産動物に対しては使用されていない。 でも薬剤耐性菌の怖いところは、一体なにが原因で耐性菌が検出されるのか、いまいちわかっていないところ。 そして、特定の抗生物質の投与をやめても、検出がなくならないところだ。 一度強くなった菌にとって、なにもわざわざ弱くなる必要性はない。自然界や動物の体内の中で着々と育っていく。普段は静かにしているものだから、誰も気が付かない。 コリスチンは過去50年間、畜産分野で使い続けられてきた。2018年になってようやく使用禁止にしてみても、もはや手遅れなのかもしれない。しかも中国はコリスチン入りの飼料を回収する*10というが、日本の場合は回収という話は聞かない。いつでも日本は産業には寛大だ。 本来的に、人間も動物も細菌まみれだ。冒頭のアシネトバクターも環境菌であり、自然界にある。細菌自体が悪いわけではなく、宿主が弱った時に牙をむくことがあるということだ。 そしてそのとき、「いろんな抗生物質が効かない菌だった」ということになり、死者1000万人という予測がされているのだ。 人類の10倍もの動物を飼育するシステム”工場畜産”を、早急に見直すべきだ。 mcr-1 *1 https://www.asahi.com/articles/ASL83544FL83TIPE028.html *2 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34045150Q8A810C1CC1000/ *3 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28845500R30C18A3CR0000/ *4 国立感染症研究所客員研究員 渡邉治雄 教授 ”食品由来薬剤耐性菌の発生動向及び衛生対策に関する研究 ” http://mhlw-grants.niph.go.jp/ *5 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/63/3/63_13-73/_pdf/-char/en *6オランダ/公衆衛生・環境保護研究所(RIVM)http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04640390164 *7 http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/webversion/web32.html *8 北村 正樹 東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部 2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/59/4/59_219/_pdf/-char/ja *9 https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(16)30329-2/fulltext *10 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28165472

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  10. 札幌で映画「THE LAST PIG」上映会を開催します!

    2018年11月18日、札幌エルプラザで映画「THE LAST PIG」の上映会を行います。アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋もお話をさせていただきます。入場料無料ですので、ぜひご参加ください!…

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ペットファミリーの欲しいものリスト

環境省・警察庁

虐待防止ポスター(PDF)

動物の虐待防止ポスター

 

環境省・パンフレット 

「飼う前に考えて!」

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